
防災と日常をつなぐ、サステナブルパッキング
開業5周年を迎え、GOOD NATURE STATIONでは、「5YEARS 5GOODS」をテーマに社会や環境、地域とつながる、さまざまなイベントを展開してきました。
阪神・淡路大震災から30年にあたる、2025年1月は、「GOOD for Social」として、日常と防災をつなぐ企画展やレクチャーを行いました。
災害はいつどこで起こるかわかりません。なんとなく不安はあるけれど、何をしていいかわからない……という方はきっと多いはず。日常の中で取り組んでおけば、いざというときに落ち着いて行動できます。
目指したのは、自分自身と大切な人を守るための、実践的な提案。「何を持ち出せばいい?」「食べ物はどうストックする?」「ふろしきが防災に役立つ!? 」……など、専門家や企業の方々の協力のもと、暮らしの中で無理なくできること、日頃から習慣にしたいアイデアを、イベントを通してご紹介し、防災と日常の接点をつくりました。
持つべきものを見つめ直す
阪神・淡路大震災から30年の節目に、今一度災害の備えを考える、企画展「サステナブルパッキング」を1月11日〜31日まで、4階ギャラリーにて開催しました。
旅の準備と防災に共通するのが、「パッキング」。せっかく防災グッズを用意していても、日頃使っていないと、使い方がわからなかったり、使用期限が切れていたりも……。日常の中で使っているものを防災に使えれば、いざという時も慌てずにすんで、なにより安心できます。防災を意識したものの持ち方や配置を、目で見てわかりやすく展示しました。
ふろしきの非常時の活用法は、実例をまじえてご紹介。京都発祥のふろしきブランド「むす美」の防災ふろしきは、撥水機能のある生地で作られていて、12種類の活用法がプリントしてあります。結んでバッグにしたり、ボレロにして羽織ったり、2Lのペットボトルの水を4本運べるほど丈夫なうえ、撥水コーティングが施されていて水の運搬にも使えてとにかく便利。小さくたたんで携帯しておけば、外出先でも使えて安心。知っていれば、違います。
さらに、おすすめのローリングストック、京都市災害時帰宅困難者ガイドマップなどもご紹介。地元の方はもちろん、海外からの旅行者にとっても役立つコンテンツで、たくさんの方が目をとめてくださいました。
自分にとって本当に必要なものを見直し、大切にものを選んで使い続けていれば、日常でも、いざという時にも支えになって、サステナブルです。
左/手軽に野菜が摂取できるカゴメ「野菜の保存食セット」は第1回 日本災害食大賞受賞。長期保存できる野菜ジュース「野菜一日これ一本」と野菜たっぷりスープを詰め合わせ。右/「京都市災害時帰宅困難者ガイドマップ」には緊急避難広場や一時滞在施設、トイレなどを掲載。日本語・英語・中国語・韓国語表記で旅行者もサポート。
日常に取り入れる秘訣、専門家に聞きました
1月17日の「防災とボランティアの日」、防災と暮らしをつなぐために尽力する、エキスパート3名をお招きして、「日常から防災まで」をテーマに、参加無料にてレクチャーを開催しました。
まず、お話ししてくださったのは、防災士の太田興さん。「正しい備えとその根拠」として、防災の優先順位やローリングストックの有効性について解説してくださいました。太田さんは阪神・淡路大震災を兵庫県西宮市で経験し、防災士の資格を取得して、いまは京都を拠点に小学校や地域団体といった、さまざまな場で、防災意識を高める活動に取り組まれています。今回のギャラリー展示の監修も務めてくださいました。
左/防災士として活動する、太田興さん。右/カゴメ株式会社の近澤佳俊さんは避難生活における食生活についてレクチャー。
「幸いなことに近年、大きな災害に見舞われず、“京都は守られている”という神話を信じている方が多いように思いますが、気候変動がつづくいまは、どこであろうと安全とは言えません。まずは、その実状を受け止めてもらいたくて。これからを生きる子どもたちや若い世代に向けて、お話ししていきたいですね」と、太田さん。
左/京都市民の地震への危機意識の低さを取り上げた、新聞記事を交えながら話す、太田さん。右/ペットボトルの水と懐中電灯を使って照明に。
被災現場に立ってきた、太田さんのアドバイスは心に響くものばかり。「避難所では、お客さんはいない。住民自身が行動すること」という言葉も、ずしんと響きました。自分たちがまず動かなければ、ことは進まない。だからこそ、日常の中で、知っておくこと、備えておくことが大事。ペットボトルの水を懐中電灯で照らして明るくする方法、ペットシートの非常時の活用法など、実演も交えて、被災時に役立つ情報を教えてくださいました。
「むす美」山田悦子さんはふろしきの活用法を実践。
山田繊維株式会社が手がける、ふろしきブランド「むす美」山田悦子さんは、日常生活や災害時に役立つふろしきの活用法をレクチャー。ギャラリー展示でもご紹介している、さまざまな活用術を実際に目の前で、広げて、結んで、包んで、手ほどき。ふろしきが形を変え、使い道が広がっていくことに、参加者の皆さんも感心しきり。日頃から使えて、防災にも役立つ、本当にサステナブルなアイテムです。
左/野菜ジュースの活用法をスライドで解説。右/「カゴメ ベジチェック®️」で野菜摂取量をチェック。
最後にご登場くださったのは、カゴメ株式会社の近澤佳俊さん。災害時の健康維持に役立つ、保存食と野菜ジュースの活用法について、教えてくださいました。近澤さんは、東日本大震災を宮城県仙台市で経験されたそうです。
被災生活では、どうしても野菜不足に陥ってしまいます。野菜を使った保存食や野菜ジュースを、日頃からストックし、ふだんの食卓で楽しみ、切れたら買い足すローリングストックがおすすめです」と、近澤さん。
栄養豊富で体にうれしいのはもちろん、おいしいものを選ぶことも大事なポイント。おいしいものは、日常を豊かにしてくれて、被災生活のストレス緩和にもつながります。
会場では、推定野菜摂取量をチェックできる機器「カゴメ ベジチェック®️」を使った、無料測定も実施。手のひらをボタンに当てるだけで、とても気軽。食生活を見直す、気づきになりました。
お三方とも、自分ごととして聞ける、日常に沿った話をしてくださって、ご参加の皆様も熱心に聞き入ってくださいました。防災をテーマにしたイベントを定期的に行うことが、意識を高めることにつながると、今回の企画展を通じて実感しました。日常と防災をつなぐきっかけづくりを、これからもつづけていきます。
![]() |
防災士 太田興さん 阪神・淡路大震災をきっかけに、予測不可能な被害に対し、正しい知識と適切な判断をもつ人材を育てるべく始まった、防災士制度。災害時の被災者支援活動や、防災意識の啓発活動などを行う。太田さんは阪神・淡路大震災の被災経験から防災士認定を取得し、京都を拠点に活動する。 |
![]() |
山田繊維株式会「むす美」山田悦子さん https://www.kyoto-musubi.com ふろしき専門メーカー山田繊維株式会社と、オリジナルふろしきブランド「むす美」の広報を務める。ふろしきの使い方を広めるワークショップやレクチャーなども開催し、広く世界にも魅力を発信する。 |
![]() |
カゴメ株式会社 近澤佳俊さん https://www.kagome.co.jp 手軽に野菜が摂取できて被災時に役立つ、おすすめの備蓄食品、カゴメ「野菜の保存食セット」は、2021年、第1回 日本災害食大賞受賞。今回は、野菜摂取の大切さ、ローリングストックなど、食を軸に被災時のアドバイスを。 |