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「ここにしかない」お菓子を生む、新しいパティスリーのかたち。

「ここにしかない」お菓子を生む、新しいパティスリーのかたち。

GOOD NATURE STATION パティシエ|松下裕介 高木幸世 奥田陽介

 

GOOD NATURE STATIONには、1階にパティスリー、3階にはカフェとチョコレート工房がオープンします。ケーキ、焼き菓子、チョコレート、ギフト……3人のパティシエたちが目指すのは「ここにしかない」もの。それはお菓子そのものだけでなく、新しいお菓子の発想法や働き方など目に見えない部分にも及びます。今回は、GOOD NATURE STATIONの個性的な菓子職人たちが目指す、新しいお菓子づくりやパティスリーについてご紹介します。

 

誰かがやることを、自分たちはしなくてもいい

東京・神楽坂で、アシェット・デセール(お皿に盛り付けられたデザート)やショコラが楽しめる「Calme Elan (カルムエラン)」を営んでいた松下裕介シェフは、ある日の午後、突然店を閉めることを決め、翌日から閉店するとSNSで告知します。

 

松下:「店には毎日多くのお客さまが来てくださっていましたが、次にやりたいことが見えていたのです。開業時とは状況が変わり、アシェット・デセールがブームのようになっていて、近隣に有名パティシエたちが専門店を次々とオープンしていました。誰かがやることはやらなくていい、自分は別のことをしよう、と」

 

 

松下シェフの決断にパートナーの高木幸世シェフも同意してくれました。

 

高木:「以前からそんな話をしていたんです。閉店の3日後、私は勉強のためにパリに旅立ちました」

 

松下:「5年後にまた会うことを約束して送り出しました。僕は1ヶ月間かけて店の整理をしたあと、前からオファーが来ていたマレーシアに飛びました」

 

それぞれの道に進み、刺激的な毎日を送っていた時、「カルムエラン」時代の顧客から連絡を受けます。

 

松下:「京都の四条河原町に新しくできるパティスリーのシェフパティシエとして、個性や技術を思う存分発揮しないかという打診でした。以前から京都に興味を持っていましたし、世界から人が訪れる街でもあります。個人店を経験して、経営力ではなく発信力に限界を感じていた僕は、『これはチャンスだ!』と思いました」

 

そんなタイミングで声をかけたのが、以前から知り合いだった奥田陽介シェフでした。

 

奥田:「僕は同じ石川県出身の辻口博啓シェフの元で商品開発や生産管理を行いながら、コンクールに出す洋菓子をつくったりしていました。松下シェフとは10年以上の付き合いで、神楽坂の店にもよく行っていました。京都で一緒にやらないかと声をかけてもらった時も、迷うことはありませんでしたね」

 

 

パリにいた高木シェフも急遽帰国することになり、3人の菓子職人がチームを組む珍しい体制がスタート。コンセプトを練り上げながら、現在はテストキッチンで商品開発や試作の真っ最中です。

 

ガラスケースのないパティスリー

「パティスリーギャラリー」というコンセプトで展開する1階のパティスリーには、十数種の生ケーキ、多彩な焼菓子、チョコレート関連商品、ギフトセットなど、合わせて60~70アイテムが並びます。

 

松下:「特徴的なのはガラスのショーケースを置かないことです。せっかくディテールにこだわったお菓子なのに、無機質なガラス越しでは美味しそうに見えない。そこでGOOD NATURE STATIONのパティスリーでは、お菓子をケースに閉じ込めません。生ケーキも焼き菓子も、見本をケースなしで並べ、どの角度からも見えるようにします」

 

奥田:「こうすることで、お客さまには見本を眺めてゆっくりお好みの商品を選んでいただけると思います。実際販売する商品は、適切な温度・湿度コントロールができるバックヤードできちんと管理しています」

 

高木:「カフェの一角にはチョコレートづくりの工房もあって、私たちが作業している様子をご覧いただけるようになっています」

 

 

お菓子づくりにも「働き方改革」を

3人が目指すのは「ここにしかない」斬新なお菓子や新しいパティスリーのかたち。そのためには働き方を新しくすることも大切だと声を揃えます。

 

松下:「海外で働くとわかるのですが、みんな本当に自由です。それはものづくりに対してだけではなく、働き方に関しても。細かいことにこだわって仕事が延々終わらないなんてあり得ない。僕は機械ができることは機械に、人の手でしかできないことを人がすればいいと考えています」

 

2002年、フランスでは週35時間労働制が始まりました。労働時間が長くなりがちな菓子業界などは質が落ちるのではと懸念され、日本でも波紋が広がりました。

 

松下:「実際はそんなことはまったくなく、トップシェフたちはどんどん機械化を進めてスタッフの労働時間を短縮し、売り上げを高めてクリエーションに磨きをかけています」

 

奥田:「時間と手間をかけるところ、機械に任せるべきところ、その判断を人が的確にしていけばいい。僕の師である辻口シェフも、その手法の代表的存在です」

 

高木:「機械化によって生まれた時間をオリジナリティある商品づくりやこだわりのために使う。そういう構図を私たちの世代が率先して描いていかなければと思います」

 

「ここにしかない」ものを生み出すためには、常に瑞々しい感性が求められます。美味しいお菓子をつくるだけでなく、お菓子づくりを志す人たちが憧れるような環境をつくることで、「ここで働きたい」と感じてもらえるようになりたいと、3人は考えているのです。

 

お菓子を通して感動を共有したい

 

奥田:「僕たちがつくるお菓子は、味はもちろん、その先につなげることを意識したい。お菓子というツールを通して情緒や感動を生み、多様な世界観を共有していければと思っています」

 

松下:「和菓子のイメージが強い京都ですが、洋菓子もしっかり生活に根付いています。高木とも話しているのですが、京都ではこだわりが強い本格派ほど支持されている印象です。そんな場所で看板を掲げるからには、ここにしかない上品で可愛らしいお菓子でなければいけない。そして、フランスにケーキを食べに行くように、台湾にかき氷を食べに行くように、僕たちのケーキを食べに京都に来てもらえるよう、3人で高め合っていきたいと思っています」

 

斬新な感覚や個性が表現されたスイーツはもちろん、それらを通じた新しい食体験ができる、革新的なパティスリーの幕開けにご期待ください。

GOOD NATURE JOURNAL編集部