GOOD NATURE STATIONが、 お客さまにお届けする空間体験

GOOD NATURE STATIONが、 お客さまにお届けする空間体験

京阪ホールディングス株式会社ビオスタイル推進室|熊代美徳

 

ホテル、レストラン、ビューティサロン、マルシェなど、さまざまな体験を楽しんでいただけるGOOD NATURE STATIONは、各フロアによって印象ががらりと変わります。また、外観のデザインにも、京都という街を意識した工夫を凝らしています。今回は、施設の建築面における特徴やフロアごとに異なる空間構成の工夫について、当施設の建築担当者がご紹介します。

 

外観は、京都らしさを現代的なデザインで表現

——まずは外観について、どのようなコンセプトでデザインされたのか教えてください。

 

熊代:「四条河原町交差点から南へ150メートルほど、河原町通に面して建つGOOD NATURE STATIONの敷地は、まさに京都の町家のような細長い形になっています。そこにどんな建物を建てるべきか? 私たちは、京都という都市が持つ歴史や伝統文化のイメージに敬意を払いながらも、現代的な感性で表現したいと考えました」

 

 

——それは、具体的にはどのような点に現れているのでしょうか?

 

熊代:「まずはファサード(建築の正面)上部に用いるアルミキャストパネルです。縦に長く延びるパネルに対して、水平のパネルを組み合わせることでアクセントを付けることで、伝統的な京町家などで見られる格子柄のようになっています。一方、お客さまが出入りする低層部は、左官壁のような手仕事の風合いが残るように仕上げています。離れて見るとスタイリッシュな印象ですが、建物に近づくとあたたかみのある雰囲気や京都らしい和の趣を感じていただけると思います」

 

[1階]マルシェのように開放的で明るい空間

——では、館内の空間構成や演出について、フロアごとについて教えてください。

 

熊代:「はい。1階は多くの食材が並ぶマーケットと、その食材を使ったメニューが食べられるダイニングが並んでいます。ここではマルシェのような開放的な雰囲気を演出できるよう、入ってすぐの場所には大きなピロティを設けました。また、天井を張らずスケルトンにしたことで、空間の広がりを感じていただけるのではないかと思っています。

 

 

熊代:「また、1階にはフロアの真ん中にフードやワインのテイスティングカウンターがあります。さらに、3階にあるパティスリーで作ったスイーツを販売するコーナーも設けています。そのような場所を経由して、入口から奥へと回遊していただきたいと考えています」

 

[2階]路地裏のような雰囲気を演出。レストランの個性を引き出す

——2〜3階はどのような点を工夫されているのでしょうか?

 

熊代:「2階のガストロノミーのフロアには、こだわりを持って出店してくださるレストランが並びます。シェフのみなさんは、料理はもちろん、内装、テーブル、椅子、お皿の1枚1枚に至るまで、トータルの演出によって世界観を創ります。ですから、それぞれの店舗の個性を最大限に引き出せるよう、共用部はあまり目立つ必要はないと考えました。そこで、共用部は京都の街にある路地裏のようなイメージで、しっとりと落ち着いた空間になっています。このようにすることで、レストランに入った時の感動がより増すように心がけています」

 

[3階]髙島屋とつながる渡り廊下から、シームレスな大空間へ

 

熊代:「3階はサロンやヨガスタジオが並ぶ、リジュビネーションをテーマとするフロアです。特徴的なのは、一般的な商業施設のような仕切り壁がなく、フロア全体がつながっているところ。フロア全体が一つの大きな『美のテーマパーク』のようになっており、物販スペースや化粧品のコーナーやカフェなどがシームレスに続いているのです。その空間を、木製のゲートを一定の間隔で設けることによって引き締まったものにし、一番奥のトータルビューティサロンへと誘導していく造りになっています」

 

——3階は北側に建つ髙島屋 京都店と接続するフロアでもありますね。

 

熊代:「そうです。髙島屋さんとは渡り廊下でつながっています。この渡り廊下には、高島屋の「T」と京阪電車の「K」を組み合わせたオリジナルのピータイルを貼っていますので、ぜひご覧いただきたいですね。髙島屋さんの方から渡り廊下を通って入ってくると、正面にパティスリーの工房があります。このあたりは黒を基調としていて、トンネルを抜けるような感じになっています。小窓が連続し、工房の中の様子が少しずつ見えるようになっている。そして、そのトンネルを抜けると、明るく広々としたフロアに出る。そんな空間演出もお楽しみいただきたいですね」

 

[4〜9階]「坪庭」のような吹き抜けを彩る壁面緑化

 

——4階から9階はホテルです。空間演出はどのように変わるのでしょうか?

 

熊代:「4階はGOOD NATURE HOTELのロビーフロアとなります。エレベーターを降りると、真っ先に目に飛び込んでくるのが中庭の壁面緑化のグリーン。一般的なホテルの構造は、真ん中に廊下があり、その両側に客室が並んでいるというものです。しかし、GOOD NATURE HOTELでは、フロアの中央部に吹き抜けになった空間がふたつあり、ロの字型の廊下が連続するような構造になっています。この吹き抜け部分の壁を緑化することで、4〜9階はフロアのどこにいてもグリーンウォールを楽しんでいただけるようになっています」

 

——屋内に大きな壁面緑化があるというのは珍しいですね。

 

熊代:「そうなんです。最初に、この建物の細長い敷地を京都の町家のようだと例えましたが、この吹き抜けもまた町家によく見られる坪庭と捉えています。壁面緑化は建物の外側で行われることが多いのですが、こちらの場合はホテルの中に入らないと見られません。そうした奥ゆかしさも、京都らしさを意識した演出のひとつです。このように、GOOD NATURE STATIONでは、それぞれのフロアの特性に応じた空間構成と演出を行っています。そこで販売される商品や、店舗でいただけるメニューだけでなく、各フロアでの空間体験もぜひお楽しみください」

 

熊代美徳(くましろ・よしのり)

京阪ホールディングス株式会社ビオスタイル推進室課長。1996年の入社以来、京阪沿線の商業施設の開発や店舗づくりを手がける。GOOD NATURE STATIONには計画の最初期から関わり、コンセプトをデザインや空間構成に落とし込む役割を担っている。

GOOD NATURE JOURNAL編集部
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