京都に自生する植物で、街中にあふれる緑を! 「5×緑」が作り出す癒しのウォールカーテン

京都に自生する植物で、街中にあふれる緑を! 「5×緑」が作り出す癒しのウォールカーテン

本年12月に開業予定のGOOD NATURE HOTEL KYOTO。その4階に位置するロビーラウンジには、開放感あふれる吹き抜けの中庭が登場し、訪れたお客さまを包み込む壁いっぱいの緑のウォールカーテンがお目見えする予定です。

 

「五感で楽しむ」というホテルのコンセプトに基づいて、視覚から癒しをもたらすウォールカーテン。私たちとともに壁面緑化プロジェクトを手がけるのは、独自に開発した「里山ユニット」を用いて都市緑化や環境保全に取り組むプロジェクト集団「5×緑(ゴバイミドリ)」です。

 

今回は、壁面緑化に使う植物を事前育成している園芸場に伺い、代表の宮田生美さんに壁面緑化のポイントや、「5×緑」が当施設で取り組むチャレンジについてお話いただきました。

 

95種類に及ぶ、京都に自生する植物をピックアップ

都市化によって豊かな自然が失われ、ますます加速の一途をたどっているヒートアイランド現象。それに少しでも歯止めをかけ、都市の中に緑を増やすことで街に季節感を取り戻すことを大切にしている「5×緑」。

たくさんの種類の緑が混植されている日本の里山の風景を、独自に開発した「里山ユニット」の中に作り出しそのユニットを組み合わせることで、当施設だけではなく、街の公共エリアや商業施設など、数々の壁面緑化を実現してきました。

 

今回、私たちはGOOD NATURE STATION全体のコンセプトとして、「GOOD NATUREに包まれ、触れ、五感で楽しめる場所」を掲げました。五感で楽しめるという言葉が示すように、エントランスは当館オリジナルの香りで包み、客室のタオルも肌触りのいいものにこだわるなど趣向を凝らしています。その中でも、視覚で楽しんでいただくためのコンテンツとして考えたのが、中庭の壁面緑化でした。

 

壁面緑化の実現を前に私たちが考えたことは、中庭に「面で見せられる壁面緑化を施したい」ということです。構想段階においてはネットやロープを使った方法を考えましたが、それでは隙間が空いて完全な「緑の面」とは言い難い。そんな時に出合ったのが、「里山ユニット」を使って壁面緑化に取り組んでいた「5×緑」だったのです。

 

 

宮田:「初めてこのプロジェクトのお話をいただいた時、GOOD NATURE HOTEL KYOTOさんからの依頼は「緑を面で展開したい」というものでした。実は以前に埼玉県の大宮にあるビルの壁面緑化を手がけ、設置から数年経って植物も育ち広い面積での緑化に成功したという経験があったので、それを活かせるとお話しました。

 

私たちは地域ごとの生態系の基盤である在来植生を「里山ユニット」の中に混植して、都市緑化に取り組むことを得意としています。その地に自生する植物で緑化を進めることで、その地域に生息する虫や鳥の姿を目にする機会が増えますし、その地域らしさや季節感を感じられます。無理なく緑が育つということも利点のひとつですね」

 

今回の壁面緑化にあたって、使用する植物は95種類に及びます。その膨大とも思える種類の植物の選定について、宮田さんに詳しくお話しいただきました。

 

宮田:「そのすべては、京都盆地の潜在植生のリストと京都市都市緑化協会が推奨している在来種のリストから、GOOD NATURE STATIONの環境に適応できる植物をピックアップしました。潜在植生とは、“人が関与せず自然のままの場合こういう植物の構成になる”というものなんですね。

 

そこから植物を選ぶことで生物学的なアプローチと文化的なアプローチが可能になりました。里山ユニットのベースとなる植物にテイカカズラを採用したのですが、この植物は生き生きとしたグリーンの中に白い可憐な花を咲かせ、多彩な表情を見せてくれます。また、香りが強く癒しの効果にも優れています。その配植については、ホテルの中庭に設置するので、落葉樹ばかりにすると冬場に寂しくなってしまう…。その対策として常緑樹と落葉樹の混ぜ方の比率を計算しています。

 

ユニットの後ろの方には背が高くなるものを、前の方にはふわっとしたフォルムのものを植えて、とにかくバランスを大切にしました。さらに、京都の地に根付く西陣織や京焼には植物をモチーフにしたものがたくさんあるので、そこからもインスピレーションを得て植物を選びました。自然の緑を眺めるとストレスの緩和効果もあることが、学術論文でも発表されています。刻々と変わる時間の中、陽が当たったり風が吹いたり、緑の香りを嗅いだりすることで、お客さまにひとときの安らぎを感じていただけるのではないかと思っています」

 

このように「GOOD NATURE HOTEL KYOTO」の館内の環境やデザイン、その他さまざまな条件を考慮したうえで工夫を重ね、都会でありながら緑あふれる景観の実現につなげることができました。

 

困難の多い「中庭」の壁面緑化への取り組み

 

今回の壁面緑化の舞台となるのは、GOOD NATURE STATIONの4階にあるGOOD NATURE HOTEL KYOTOのロビーラウンジを起点とした吹き抜けの中庭です。このプロジェクトに関して宮田さんの懸念事項は、日照が足りるかどうかということでした。植物の成長に大切な光、水、風。水や風に関しては策があったものの、光に関しては重要なポイントになりそうでした。

 

その対策のため、設置フロアの計5カ所の照度を春分の日・夏至・秋分の日・冬至の4回にわたって計測し、その照度のデータやフロアの日照条件、フロア特性なども合わせて植物をピックアップすることでクリアしました。また、照度が足りない分は人工照明で補足するという対策も導入することで、景観を保つこともできるようになります。

 

宮田:「今回の壁面緑化は、京都の在来種をいかに取り入れるかと合わせ、植物の「面」を作るにあたってきちんと技術的に解決していけるかどうかの挑戦でした。とにかく巨大な緑のウォールにするためには、里山ユニットを組み合わせる際に裏面で固定して処理をすることが絶対条件です。

それが表面に出てしまうと緑一面にはなりません。さらにホテルのデザイン上、平らな壁面ではないので、安全性を確保しながらユニットを固定させる方法の決定までは半年間に及ぶ試行錯誤がありました。現在、設置に向けて植物の事前育成を行っていますが、育成の段階でも夏の日差しに当てすぎないよう遮光幕を張ったり、さまざまな工夫に取り組んでいます。いろいろなフェーズで工夫を重ねて、今回の新しい挑戦を乗りこえていこうと思っています」

GOOD NATURE JOURNAL編集部
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