GOOD NATURE STATIONにとって、一番の挑戦だったのはオリジナルコスメブランド「NEMOHAMO」でした。GOOD NATURE STATIONを運営する株式会社ビオスタイルの代表取締役社長・髙原英二は、新ブランドの立ち上げに奔走する中で、福岡県の芦屋町に拠点を置く美容薬理株式会社の金井誠一さんと出会います。話し合いを重ね、多くの共通点を見出した二人はパートナーシップを結び、まさに二人三脚で「NEMOHAMO」は誕生しました。その過程で髙原が感じ取った“金井イズム”は、やがてGOOD NATURE STATIONにとっての指針となりました。そんな二人の運命的な出会いを紐解いていきましょう。
「原料から手作り」の一言に衝撃
髙原:「最初にお会いしたのは、3年前に東京で開催された化粧品の展示会でした。僕はもともと化粧品会社に勤務していましたが、スキンケア商品の開発は初めてのこと。新しい商業施設で販売する化粧品を作るという命を受けてビオスタイルに入社したばかりの頃で、まずは情報収集に行こうと足を運んだんです」
金井:「ギフトショーの中で美容家の吉川千明さんがセレクトしたオーガニックコスメをご紹介いただくコーナーがあり、そこに美容薬理のアイテムもご紹介いただいていたんです」
髙原:「どんな化粧品なんですかと尋ねたら、『原材料を1から作っているんです』と聞いて衝撃を受けました。化粧品というのは原料は購入するのが当たり前なので、原材料を作るという概念がない。だから正直に言うと、最初は金井さんが何をおっしゃっているのかよくわからなかった(笑)。よく聞くと、金井さんも以前は化粧品やトイレタリー商品の会社に勤務されていたところ、アレルギーやアトピーでご自身が悩まれたのをきっかけに独立して、植物を使った無添加の石鹸や化粧品を作られるようになったと」
丁寧で正直な化粧品づくりとは
化粧品業界の常識を軽々と超えた製品づくりをしている金井さんに惹かれた髙原は、何度も金井さんの工場や畑のある福岡県・芦屋町に通い続けたと言います。
髙原:「畑で原料となる植物を作っているというのも驚きでしたが、それを抽出するための機械も手作りしていると聞いて。僕のポリシーは必ず現場に足を運ぶことなので、すぐに現地に足を運んでみたら、広大な敷地で植物やハーブを育てていて、稼働している工場は排気も排水も出ない工夫がされている。そして石鹸の熟成庫を見せていただいた時は、驚きしかありませんでした。こんなに丁寧に正直に化粧品を作ることができるものなのかと」
ブランド構築の中で掴めた「金井イズム」
こうしてオリジナルコスメブランド「NEMOHAMO」の商品開発が始まります。ブランドの構築が進んでいく中で、髙原が大切にしたのが“金井イズム”だったと明かします。
髙原:「商品開発に関しては完全に二人三脚で進めていきましたが、パッケージや店舗などのブランド構築はこちらで進めていきました。その中でも特に意識したのが “金井イズム”を絶対に壊さないことだったんです。化粧品だからといって、女性に好まれるための安易な仕掛けをすることなく、金井さんが商品づくりで大切にしていることを具現化する。僕が感じ取った“金井イズム”とは、とにかく植物に対するリスペクトの心を持っていることなんです。植物が一番力を放つ旬の時期を見計らって収穫する。低温抽出で余すことなく植物の力をエキスにする。そして、そのベストな配合を追求し尽くす。原料を買わずに、時間を惜しまず試作し続ける。どれをとっても職人なんです。そんな“金井イズム”を根本に置いたら、店舗には金井さんの原点である石鹸を熟成庫ごとディスプレイしようとか、里山を思わせるデザインのカウンターを置こうという風にアイデアが広がっていったのです」
一人ひとりが思いを語れる場所に
金井イズムの重要なポイントでもある「商品を届ける人間が、原料・製法すべてしっかりと語ることができる」という考え方は、GOOD NATURE STATIONの施設全体にも大きな影響を与えました。
髙原:「1階で販売している野菜をはじめ、オリジナルフードブランドのSIZEN TO OZENしかり、3階で販売しているKA SO KE KIの雑貨しかり、ホテルのフロントのデザインや各フロアのデザインも、GOOD NATURE STATIONの館内すべてにおいて共通しているのが、ストーリーがあるということなんです。その物語がEAT、BEAUTY、STAYと各フロアに詰まっている。こうした考えに至ったのは、金井さんとの出会いがあったからこそ。今ここに集っているスタッフは、それぞれの専門家みたいな人ばかりなんです。好きだから、伝えたいから、物語がたくさんあるから、一人ひとりがそのブランドや商品の広報担当になれる。そんな“金井イズム”を京都の街で広げていきたいなと思いますね」