京都を舞台に世界中を驚かせる料理を。レストラン「TAKAYAMA」の挑戦。

京都を舞台に世界中を驚かせる料理を。レストラン「TAKAYAMA」の挑戦。

TAKAYAMAシェフ|高山忠司さん

 

GOOD NATURE STATIONの2階、特別な時間と食体験を提供する「プレミアム・ガストロノミーフロア」に、イタリアでの修業経験を持つ高山忠司シェフの初となるレストラン「TAKAYAMA」がオープンします。美味しさや食材にこだわるのはもちろん、視覚や聴覚にも訴えたいと、ライブ感満載のカウンターに設えるのは12席のみ。今回は、そのセンターに立つ高山忠司シェフのキャリアと料理にかける想いをご紹介します。

 

初めてのイタリアで味わった挫折

中学を卒業してすぐに働き始めた高山さんですが、その時は料理人になろうという気持ちはなかったと話します。

 

高山:「初めてキッチンに入ったのは16歳の時。地元の小さなイタリアンレストランでした。そこで料理することが大好きになり、いつかイタリアに行こうと決めたのです」

 

20歳になると、魚市場でも働き始めた高山さん。レストランとのダブルワークを続けながら渡航資金を貯めました。

 

高山:「市場で働く人にはとても良くしてもらいました。魚を食べるのは日本の文化ですし、勉強にもなりました。頑張って働くうち、22歳で資金のメドがついたので1年の予定でイタリアへ渡ることを決意。その頃の僕は一人で何でもできると思っていて、怖いものなんて何もありませんでした。今から思えば勢いだけで意気揚々とローマの語学学校に入りましたが、そこで人生初の挫折を味わったのです」

 

 

世界から人が集まる語学学校で講義に使われる言語は英語。英語の勉強をして来なかった高山さんには想定外でした。イタリア語も単語くらいはわかるものの、それだけではコミュニケーションがとれるはずもありませんでした。

 

高山:「当時は1ユーロが170円もしていたため、アルバイトをして少しでも資金を稼ぎたかったのですが、滞在許可が取れないから働けない。英語ができないから友達もできない。夢だったイタリアにいるのに、旅行したりレストランに行くこともできず、毎日部屋にこもって泣き暮らしていました」

 

再びイタリアへ。星付きレストランで腕を磨く

エネルギッシュで闊達、ジョークと笑顔を絶やさない今の高山さんからは想像もできませんが、最終的に1年の予定を10ヶ月に短縮し、悲嘆に暮れながら帰国。再び魚市場で働き始めます。そんな高山さんをかつての仲間は歓迎してくれましたが、胸のうちにはひとつの思いが芽生えていました。

 

高山:「英語ですね。英語ができなかったばかりに初めての挑戦は悲惨なものになりましたが、逆に英語さえできれば世界のどこへ行っても意思疎通ができるし、友達もできる。そう考えて、市場で働くかたわら、2年間、英会話を勉強しました」

 

悔しい思い出をバネに、また前を向いた高山さんはワーキングホリデーを活用してカナダへ。英語力に自信をつけて帰国。再度、イタリアに渡る機会をうかがいます。

 

 

高山:「27歳になった頃、最後のチャレンジだと思ってイタリア行きを決めました。前回の轍を踏まないよう、受け入れてくれるレストランを前もってリサーチ。最初は北イタリア、美食の宝庫と言われるピエモンテのレストランで。それから海沿いの美しい街、トスカーナへ。その後、ナポリを擁するカンパーニャ州のクレシオスで働くことになりました」

 

「クレシオス」は、当時30歳の若きオーナーシェフが開いたレストランで、ミシュランの一ツ星を取っています。モダンイタリアンの旗手として注目されていたシェフの元で、高山さんはかけがえのない時間を過ごします。

 

高山:「就労ビザに切り替えることもでき、やがて2番手を任されるようになりました。毎日が楽しくて、最初の時とは大違い。充実した時を送るうち6年近くが経っていました」

 

そのままイタリアに残り経験を積む予定でしたが、自分のレストランを開くというチャンスに出会い、高山さんは帰国を決意します。初めてとなる自分のレストランを京都に構える、という新たな目標ができたからでした。

 

満を持して京都へ。世界を相手に料理をしたい

 

高山:「やはり初めての自分の店は日本で開きたいと考えたのです。イタリアと日本では最先端の料理に対する解釈も少し違うはずですので、6年間の成果を見てもらいたいという気持ちで頑張り、そして、僕は世界を相手にしたい。そういう意味でも京都は世界中の人が知っていますし、観光客も立ち寄りやすい。使いたいと思う食材が豊富な点も魅力でした」

 

開店を決めてからは準備を進める一方、国内外のさまざまなジャンルのお店で研修を重ねました。

 

高山:「メニューを考える上での参考にしようということではなく、多くの人に愛される店のエッセンスを体感したかったのです。予約が取れないと言われる人気店なら、美味しいのは当たり前。少し前には『美味しい』とはベクトルが違う表現方法が話題になりましたが、美味しさと、さらにその先にある喜びや驚きを肌で感じてほしいと思っています」

 

 

「TAKAYAMA」は、ジャンルにとらわれない新しいレストランを目指しています。時間が過ぎることをも忘れさせる、TAKAYAMAワールドの幕開けに向けて、着々と準備が進められています。

 

高山 忠司(たかやま・ただし)
広島県出身。22歳でイタリアに渡るも挫折して帰国。25歳でカナダへ。27歳で再度イタリアに渡り、イタリア各地で約6年間修業を積む。2018年に帰国。レストラン「TAKAYAMA」オープンに向けて準備を進めている。

GOOD NATURE JOURNAL編集部
Home > ジャーナル > 京都を舞台に世界中を驚かせる料理を。レストラン「TAKAYAMA」の挑戦。