Re:Planter・村瀬貴昭さんが提案する  植物を介したコミュニケーションの形

Re:Planter・村瀬貴昭さんが提案する  植物を介したコミュニケーションの形

お気付きの方もたくさんいらっしゃるでしょうか。GOOD NATURE STATIONの3階にあるコスメティック&トイレタリーやクラフトアイテム&ホリスティックウェアの販売ゾーンに、美しい植物が目を引くテラリウムが点在していることを。ガラスの球体に植物を閉じ込めたSpace Colonyシリーズの生みの親が、京都在住の植栽家である村瀬貴昭さんです。屋内にいながら、小さな生態系を感じられるSpace Colonyや「Re:Planter」としての村瀬さんのクリエイティビティの源について、そしてこの作品をGOOD NATURE STATIONで表現することへの思いなどをお伺いしました。

 

植物と消費されるものを掛け合わせる

 

 

 

幼少期から盆栽を育てていた祖父の影響もあって、植物が身近にあったという村瀬さん。昨今のグリーンブームが過熱するずっと前から、サボテンや観葉植物、水草を使ったディスプレイなど、植物に触れる生活を続けてきたと言います。

 

村瀬:「もともと廃墟を見て回るのが好きだったんですが、ある時、木造の建物の中に真っ白なフロアや柱が印象的な廃墟に出会いました。そこで、ボロボロの建物の隅にシダが力強く生えているのを目にした時に、植物が自然に還っていくその過程がすごくきれいで、“こういうものを作品として作りたい”と強く思ったのがRe:Planterとしての活動の原点になりました」

 

植栽家・村瀬貴昭さんのソロプロジェクトである「Re:Planter」は、Space Colonyをはじめ、使われなくなったテレビやPCの基盤、廃材などに植栽し、植物を育て、廃材と一体化した唯一無二の作品に昇華させているのが真骨頂です。

 

村瀬:「一言で言うと、“植物によるリサイクルブロジェクト”とでも言いましょうか。人が作ったものは早いサイクルでどんどん消費され廃棄される時代になっていますよね。そんな中で再び使えるものにするリサイクル技術も高まってはきましたが、やっぱり廃棄されるものもたくさんあって…。そういったものを『これは鉢になるんじゃないか』『この植物を合わせたら面白くなるんじゃないか』という発想から、植物と消費されるものを掛け合わせて育てて、ひとつのオブジェクトとして成立させることを目指しています」

 

「Space Colony」誕生のきっかけ

 

ガラスの球体の中に土と苔を敷き詰め、植物を植え込みライトを当てて小さな生態系を楽しめる「Space Colony」。村瀬さんの代表作であるこの作品が生まれるきっかけは京都にありました。

 

村瀬:「京都ならではの事情なんですが、鰻の寝床のような家屋が多く、日当たりが良くないので、植物がうまく育たないことも多いんです。その中でどうしたら植物を育てられるかを考えた時、学生時代に水槽の中で水草を育てていたことを思い出しました。そういえばあの時は水槽の中に光を当てて、水草は育っていたなと。当時LEDの照明の種類が増え始めた頃だったので、ちょっとテストしてみようと照明のガラスの中に土と植物を植えて知り合いのお店に取り付けてもらったら、植物はしっかりと育つということがわかったのと同時に、お客さまからの評判もとても良かったんです。その経験が今のプロジェクトの原型になりました」

 

 

 

雨が降り、植物や動物に降り注いで、それが土にも根にも浸透し、濾過された水をまた動物が飲む。そういった自然の理や自然の循環システムへの興味をそのままガラスの球体の中に成立させたいと村瀬さんは語ります。

 

村瀬:「苔ってこんな風になるんだとか、水はこういう風に土の中に入っていくんだとか、植物の育つ過程をたくさんの人に見ていただきたいと思っています。そんなちょっとした気づきが、例えば生活の中での自然への興味につながったり、そこにいる人との会話のきっかけにもなる。植物を介したコミュニケーションになればうれしいですね」

 

植物を育てる姿もGOOD NATUREに

 

 


 

GOOD NATURE STATIONでは、3階のコスメティック&トイレタリーやクラフトアイテム&ホリスティックウェアの販売ゾーンに4つのSpace Colonyがあります。また、クラフトアイテム&ホリスティックウェアの販売アイテムの棚やGOOD NATURE HOTEL KYOTOのスイートルームの植物のコーディネートも村瀬さんが手がけています。

 

村瀬:「当初3階に置くSpace Colonyはもっと大きなものをというアイデアもありました。ですが、このフロア販売するのはコスメや雑貨など小さなアイテムが多い。大きなSpace Colonyは見応えがありますが、小さなアイテムと合わせるには小さなものの方が合うなと、このコンパクトなサイズに落ち着きました。今は扱っている商品と関連づけたり、販売する商品を印象付けられるようなイメージの植物をセレクトして月に1回ぐらいのペースで植物の入れ替えやメンテナンスをしています」

 

 

村瀬さんがメンテナンスに訪れると、スタッフが細かく質問したりメモをとっています。お客さまから特にSpace Colonyに関してご質問をいただくことが多いので、きちんとお答えできるように必ず村瀬さんにいろいろお話を聞いているのです。

 

村瀬:「こういったところに植物を置くのは商品や空間をよりよく見せるためだし、お客さまに植物を楽しんでいただくためですよね。だけど、僕はここで働く人にも植物を置くことや育てること、メンテナンスすることも含めて楽しんでほしいと思っています。僕が来られない間の水やりや簡単なメンテナンスはスタッフのみなさんにレクチャーしたうえでお任せしています。こちらのスタッフの方はとても熱心で、最近水やりのペースもつかめて来て、育てるのがとても上手になりました。循環を大切にした商業施設だからこそ、スタッフが植物を育てている姿も含めてGOOD NATUREであるべきだと思うんです。植物を育てるという共通の目標があって、密なコミュニケーションをとることで、植物への理解が深まり、面白いと思ってもらうことにつながる。それが植物を育てる自信へと変わっていくと、植物への着眼点が一歩進んだり、販売アイテムのコーディネートへとどんどん踏み込んでいけるんです。そうするとさらにお客さまとの会話にもつながっていく。植物を介したコニュニケーションで、GOOD NAUTRE STATIONが盛り上がっていけば面白いなと思います」

 

 

村瀬貴昭(むらせたかあき)

幼少期に祖父の盆栽、思春期にアクアテラリウム、青年期に稀少植物のコレクターという趣味を持ちながら育つ。それら植栽を独学で試行錯誤を続けながら2012年より「Re:planter」としての活動を開始。 Re:cycle×Plantsをコンセプトに、京都に軸足を置きながら自然の理を探求し循環する生きた作品作りを続けている。

URL : http://replanter.com/

GOOD NATURE JOURNAL編集部
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