今、飲食業界全体で課題となっているのは、プラスチックをはじめ、商品にまつわる包材や容器などのゴミをどう減らすのかということ。どうしても出てしまうことが避けられないゴミだけど、素材や形、その選び方の工夫やちょっとしたアイデアで、少しでも未来の地球に対してできることはないだろうか…。GOOD NATURE STATIONの1階、MARKETで使用しているテイクアウト用のカップやカトラリーには、地球や環境について考えるうえでお伝えしたいことがたくさん詰まっています。
業界の当たり前を疑ってみる
GOOD NATURE MARKETでフードやドリンクをご提供するにあたって、どんな包材や容器を採用するのか。それは私たちにとっても大きな課題のひとつでした。料理の内容が見える透明性、液漏れしない本体とフタの嵌合(かんごう)性、そしてなんと言ってもリーズナブルであること。それらを考慮して、現状の飲食業界では、包材にしろ容器にしろ、プラスチック製のものを使用するのが常識となっています。ただ、その常識通りにプラスチック製のものを採用するのであれば、私たちが提案している「地球にも、社会にも、環境にも心地よいこと」には相反してしまう…。今回、包材や容器のセレクトを担当した伊東大助も、「最終決定に至るまでは課題だらけでした」と言います。
伊東:「これまでも飲食業界で働いてきたので、包材はプラスチック製であることが当たり前でした。でも、このGOOD NATURE STATIONではそんな当たり前を疑うところから始めるのが大前提。新しい施設でもありますし、とにかく今までに見たことがなく、おしゃれで、そして地球にも優しい包材を探そうと大きなテーマを決めました。そこからは口コミはもちろん、足を使って歩き回って理想のものを探す日々が続きました」
実際に包材を探し回って痛感したのは、プラスチックをまったく使用しないというのが難しいこと、エコ包材の需要は少しずつ上がってはきたもののまだまだ価格が高いことの2点でした。エコ包材として魅力的であればあるほど価格は高く、価格が魅力的であるほど、耐久性が足りなかったり、どこかに不便が出てしまったり…。
伊東:「エコ包材はまだまだ目が向けられたばかり。100%エコと言えるものがなかなかなく、個人のエコに対する考え方もまちまちです。まずはとにかく自分たちが地球やゴミの問題に対して“どう取り組むか”という姿勢をしっかりさせ、その姿勢に対して自分たちらしい基準を持てばよいのでは?と思うに至りました」
バタフライカップとの運命の出会い
そこで、プラスチック包材を極力避けることでプラスチックゴミの量を減らし、焼却する際のCO2排出量も減らしていこうという方針を定めました。その中で、運命的ともいえる出会いとなったのが、ドリンクテイクアウト用のバタフライカップでした。
伊東:「当時アイルランドで開発されて間もないカップだったんですが、これは衝撃でした。ホットのドリンクもアイスのドリンクも、さらにスープにも対応できるのですが、特殊なデザインになっているカップ上部をパタパタと閉じることで液漏れを防げます。しかも、上部を畳んだカップの両端の隙間からドリンクを直接飲むこともできるんです。通常のテイクアウト用カップには必須だったプラスチック製のフタもストローも必要としないし、カップの側面は二重構造でスリーブ機能も果たします。100%紙製なので、そのまま捨てても問題ない。これひとつですべての問題が解決する!と思いました」
バタフライカップとの出会いは、GOOD NATURE MAEKETでのドリンクの提供方法やオペレーションも変えることにつながりました。
伊東:「今までにない形の、一見不便なバタフライカップを使うことでお客さまから『珍しいカップだね』『どうやって飲むの?』とご質問をいただきます。そこから『プラスチックを使っていないんです』という会話が生まれ、お客さま自身の気づきのきっかけになればうれしいなという思いが強くあります」
「見たことない!」「飲みにくかった」など店頭でもさまざまなご意見をいただきますが、それこそが正解だと伊東は言います。
伊東:「ポジティブな意見もネガティブな意見も含めてSNSや口コミでこのカップが広がっていくことこそが、今は大切だと思っています。エコ包材を使い続けていくこと、私たちが採用した理由をお伝えし続けていくことがGOOD NATURE STATIONそのものの命題でもありますし、それが地球の未来に繋がっていくと信じることが、僕らのできることかなと」
バタフライカップはドリンクのほかにも、オーガニックナッツの量り売り用カップとしても使用しています。耐水性もしっかりしているので、ご自宅やオフィスで洗って再利用することも可能です。
また、耐久性・耐水性の問題から、ノープラスチックが難しいカトラリーやお箸は、植物由来のプラスチックであるバイオプラスチックを使うなどできる限りの配慮を行っていますし、洗って何度もご使用いただけるのも特徴です。マドラーはなんと木の枝。宮崎県のブルーベリー畑の枝を拾い集め、怪我をしないよう加工と徹底的な殺菌を施して使用しています。丸がデザインされた包装紙は、ギフトバッグ。今回ゴミを減らすことを目的に、ショッピングバッグや大きなギフト包装は有料になっていますが、こちらは小さなギフト包装用にご準備しました。実はこちらも、大きなギフト包装の際に出てしまう余り紙からスタッフがひとつひとつ手作りしたもの。お申し出いただければ、無料で包装させていただきます。
私たちが目指したいのは、これらの包材が「珍しいものではなくなること」。エコ包材が当たり前のものになるまで粘り強く使い続ける。それが地球にとっては小さなアクションでも、継続して取り組んでいくことを大切にしたいと思っています。これからも新たな包材を探しつつ、リユースカップの利用のようなエコなサービスに関しても検討を重ねながらご提案していく予定です。