アーティスト自身が出品・企画・運営までをトータルで行う新しいスタイルのアートフェアとして、2018年に産声をあげた「ARTISTS’ FAIR KYOTO」。3年目を迎える今年、そのサテライトイベント「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020:BLOWBALL」の新会場の一つとして、GOOD NATURE STATION4階のギャラリースペースで展覧会がスタートしました。関西を拠点に活動を続ける7名の女性アーティストが所属する共同アトリエ「punto」、アーティストユニット「副産物産店」、そして仲地志保美の3組がつくり出す唯一無二の空間、「Wunderkammer(ヴンダーカンマー/驚異の部屋)」についてご紹介していきましょう。
「アートを買う文化」を醸成し、アーティストの活躍の場を広げる
2018年から始まった「ARTISTS’ FAIR KYOTO」は、日本のアートシーンをさらに活性化させたいと立ち上がりました。国内外で活躍する旬なアーティストの作品を展示するだけにとどまらず、そのアーティストたちがネクストシーンを牽引する注目の新進若手アーティストをピックアップし、ともに作品を展示・販売するというのが、他のアートフェアにはない特徴です。京都で重要文化財となっている近代建築や、街中に残る工場跡を舞台に、有名アーティストと若手のアーティストが一斉に作品を展示するというのが、このアートフェアの面白い試みであり、「作品の面白さ」ですべてのアーティストが勝負するその熱気も見どころです。
そして、もう一つアーティストの活躍の場を広げることを目的に開催されるのがサテライトイベント「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020:BLOWBALL」です。2月下旬〜3月下旬まで、京都市内のさまざまな会場を舞台に9つのアートイベントをそれぞれ開催しています(開催日程は展覧会により異なる)。昨年12月にお目見えしたGOOD NATURE STATION 4階のギャラリーも、新会場の一つとなっています。
こちらで開催されているのは「Wunderkammer(ヴンダーカンマー/驚異の部屋)」。Wunderkammerとは、16世紀頃のヨーロッパで盛んになった、世界中の珍しいものを収集・展示した空間のことです。そのコレクションは自然科学・美術品・装飾品・宗教的遺物など多岐にわたり、現在の博物館の前身ともなりました。そんなタイトルが付けられた展示では3組のアーティストによるコラボレーションをお楽しみいただけます。
ここでしかなし得ない3組のコラボレーション
まずは京都の芸大を卒業した、岡本里栄さん・嶋 春香さん・天牛美矢子さん・長谷川由貴さん・松平莉奈さん・森山佐紀さん・山西杏奈さんら、7名の女性アーティストが所属する共同アトリエ「punto」の面々が作品を展示・販売します。絵画や立体などジャンルが幅広いのはもちろん、作品に使う材料もフレスコ・油絵具・岩絵具・木材・漆・布・紙などこちらもそれぞれ。メンバー一人ひとり、全く異なる個性を持った作品には不思議な魅力があります。ぜひ彼女たちの作品を見る際は、タイトルの下に記された素材にもご注目ください。
そしてもう1組が、美術家で京都のアートホステルkumagusukuの代表も務める矢津吉隆さんと、フリーペーパーショップ只本屋の代表の山田毅さんからなる“副産物”を売る「副産物産店」です。副産物産店は、京都に数多くあるアーティストのアトリエで作品を制作する過程で生まれた廃材をアートの“副産物”と捉え、改めて販売することで資材循環の仕組みをつくり、新しい価値を持たせることを目的としたプロジェクトです。今回の展示にあたって旧知の仲だったpuntoを指名し、彼女たちの作品の副産物を使ったコラボレーションをと考えたのは、副産物産店の矢津さんでした。
矢津:「このGOOD NATURE STATIONのコンセプトには、圧倒的に女性性を感じたので、ここで展覧会をするならば女性作家をと思いpuntoに声をかけました。また、展示だけでなく、ここを訪れる女性のお客さまが気軽に手にとって買えるアートとはなんだろうと考えた時に、行き着いたのがアクセサリーでした。そこで、我々副産物産店と同じ京都市立芸術大学出身のアクセサリー作家である仲地志保美さんに副産物を使ったアクセサリー制作を依頼したのです。捨てられるはずだった副産物を、また別の作家の手で新しい作品として生まれ変わらせるという初めての試みです。モノの価値とはどのようなものなのか? その問いかけに答えはないのかもしれませんが、今回の3組のコラボレーションによって、また作品とその副産物でつくられたアクセサリーによって、新しい価値を生み出せるのではないかと考えています」
puntoが作品を生み出し、副産物産店によって廃材がピックアップされ、仲地志保美によってアクセサリーへと形を変えてゆく「循環するアート」。作品に使われている材料はどんなものかに注目しながら鑑賞した後にアクセサリーを見ることで、どんな副産物からできたアクセサリーかを考えたり確認したりするアートの見方も、とても斬新な体験になるはずです。
実はアートの売り買いが活発なアジア圏の中にありながら、日本はまだまだその点では余白を残している現状があります。アートが売り買いされることの活性化も命題にしているこのイベントで、実際に作品を見て購入することが若いアーティストの創作の幅を広げる手助けにもなっていくことでしょう。
モノや意識、社会に至るまですべてのものが循環していく仕組みを大事にしたいと考えているGOOD NATURE STATIONが舞台になるからこそ生まれた「Wunderkammer」。会期中2月22日(土)と3月1日(日)には、アーティストトークも開催予定です。ぜひ3組のアーティストがどんなことを思い描きながら作品を制作し、この驚異の部屋を生み出したのか。その生の声に耳を傾けてください。
また、アートに興味がないみなさんも、お気軽に立ち寄ってこの不思議な循環するアートから何を受け取ることができるのか、自分の感性を楽しみにご来場ください。
punto × 副産物産店+仲地志保美
「Wunderkammer(ヴンダーカンマー/驚異の部屋) 」
punto
副産物産店
仲地志保美
日程:2020年2月15日(土)〜3月22日(日)
時間:10:00 – 20:00
会場:GOOD NATURE STATION 4F ギャラリー
※GOOD NATURE HOTEL KYOTO専用エントランスのエレベーターより4階へお越しください。ホテルロビーフロントの左手奥にギャラリーがございます。
入場料:無料
アーティストトーク
◆2/22(土)
話す人:岡本里栄・松平莉奈・山西杏奈・山田毅(副産物産店)・仲地志保美
◆3/1(日)
話す人:嶋春香・天牛美矢子・長谷川由貴・森山佐紀・矢津吉隆(副産物産店)
時間:両日とも13:30〜15:00
入場料:無料
問い合わせ:075-414-4222(ARTISTS’ FAIR KYOTO実行委員会 ※平日10時~17時)