GOOD NATURE ACTIVITYで体感する、生産者の素顔とアンダーツーリズムの魅力

GOOD NATURE ACTIVITYで体感する、生産者の素顔とアンダーツーリズムの魅力

ご覧ください、この大きくて真っ赤ないちご。一口ほお張ると瑞々しい果汁が溢れ出し、甘みと酸味、香りが口の中いっぱいに広がります。

 

京都府八幡市のかみむら農園で栽培されているこのいちごは、日本全体の収穫量のうちわずか0.002%しか収穫されないオーガニック栽培によるもの。GOOD NATURE STATIONでは、こうした希少な農産物を手がける生産者を訪ね、その想いに触れると共に、のんびりとした時間や自然を満喫できる「GOOD NATURE ACTIVITY」を定期的に開催しています。3月から始まった、かみむら農園でのいちご狩りの様子をご紹介しながら、その魅力をお伝えします。

 

生産者を応援するアンダーツーリズム

 

「GOOD NATURE ACTIVITY」は、 こだわりを持って農業などに取り組む京都近郊の生産者のもとを訪れ、実際の作業を体験したり、そこで採れるものを味わったりすることができる体験型の観光ツアーです。単にアクティビティを楽しむだけでなく、生産者の方々の想いや苦労をお聞きしながら、品質の高さや美味しさの理由を知ってもらう機会にしたいと考えています。同時に、観光による収入を生み出すことで、小規模生産者を応援し、観光客だけでなく地域や作り手にとっても良い循環を生みだすことも目的の一つです。

また、近年、京都だけでなく世界中で問題になっているオーバーツーリズム(観光集中)の緩和策としても取り組んでおり、自然に囲まれた風景の中でゆったりした時間を過ごすことで、アンダーツーリズムの魅力を実感していただこうと考えています。

 

希少価値の高いいちご

 

それでは実際のアクティビティの様子をご紹介しましょう。朝9時にGOOD NATURE STATIONを出発し、車で約20分。京都府八幡市にあるかみむら農園に到着しました。出迎えてくれたのはオーナーである上村慎二さん。10年前にそれまで勤めていた会社を退職し、奥様の実家があるこの地で農業を始めました。

 

当初は農業に対する知識はおろか、有機栽培という言葉も知らなかったそう。就農しようと京都府へ相談したところ、「美味しい野菜をつくれる人」として紹介されたのが師匠の上田義輝さんでした。上田さんの教えを受け、有機栽培をスタート。現在では 3種類のいちごをはじめとする野菜や果物をオーガニック農法で栽培するまでになりました。

 

 

上村:「いちごはアブラムシなどの害虫がつきやすく、農薬を使わずに栽培するためには高度な技術を必要とします。そのためオーガニック農法で栽培する生産者は、日本では私を含めて10名ほどしかいません。うちでも3年ほど試行錯誤を繰り返し、ようやく5,700株ほど生産できるようになりました。」

 

 

そんな上村さんのお話を伺ったあと、早速いちご収穫を体験。収穫できるのは甘みの強い「紅ほっぺ」、バランスのいい酸味のある「よつぼし」、やや小ぶりの「宝交早生(ほうこうわせ)」の3種類。参加者はそれぞれの味を食べ比べながら、どんどんいちごを採っていきます。上村さんが「有機JAS認定を受けたいちご狩りを体験できるのは、このGOOD NATURE ACTIVITYだけなんですよ」と話すように、とても貴重な体験です。

 

 

 

 

安心で安全ないちごのために

かみむら農園のいちごはどれも瑞々しく、きれいな形をしています。そのためにはどのような工夫があるのでしょうか。

 

 

上村さんが「最も大切」と話す肥料は、農園のある八幡市の名産品として知られる竹です。八幡市は良質な竹材の産地として知られ、竹工も盛んに行われています。その過程で生まれる廃材を肥料として活用することで、通常ならコストが高い竹を安価で仕入れることができるだけでなく、産業廃棄物を減らすことにもつながっています。その他にも、近隣の豆腐屋さんから仕入れたおからや、香り高い油粕などを使って豊かな土壌を育てています。

 

 

もう一つは、「ビーフライ」と呼ばれる安全で清潔な管理下で育成した農業用のハエを用いて受粉を行う農法です。通常の受粉はハチを用いることが多いのですが、ハチに刺されるとアナフィラキシー(全身的なアレルギー反応)を起こすこともあり、リスクが伴います。上村さんは、自らがアレルギー体質であることも考慮し、安全性の高いビーフライを取り入れていると言います。

 

 

上村:「衛生的な環境で飼育されたハエの幼虫がカップに入って届き、それが孵化してハエになります。ハチは花の数が少ないと同じ花に何度も受粉を繰り返してしまい、それが原因でいちごの形が崩れてしまうのです。ハエに受粉させることによって、美しい形のいちごがたくさんできるようになりました。ハエと聞くと驚く人も多いかもしれませんが、安全性にはまったく問題がありません。」

 

化学肥料を使えば大きなイチゴを収穫することも可能ですが、甘みや酸味だけの単調な味になりがちです。上村さんのいちごは甘みや酸味だけでなく、香りや食感も抜群で濃厚な味わい。その美味しさは、日本有機農業普及協会が毎年開催している栄養価コンテストの大根部門で二度も日本一に輝いたことによって実証されています。

 

オーガニック農法にこだわる理由

 

夢中で楽しんでいるうちに、あっという間に1時間の収穫体験は終了。大阪から参加されたご夫婦も大満足で、「まるで桃やリンゴのような香りと味わい」「こんなに瑞々しくて美味しいいちごは今まで食べたことがありません」と喜んでいました。手土産にさらに「紅ほっぺ」をいただき、大満足でアクティビティは終了しました。

 

最後に、上村さんはなぜオーガニック農法にこだわり続けているのかをうかがいました。

 

 

上村:「以前、マルシェに出店した時、全身黒づくめの方がブースに来られました。真夏の暑い日なのに長袖で、最初はギョッとしたんです。でも、よくよく話をお聞きすると、その方は化学物質過敏症だったのです。どのように作物を育てているかなどいくつか質問されたあと、購入したほうれん草をその場で生のまま口にされました。そして、30分経ってから『あなたの野菜は食べても大丈夫でした』と仰って、その他の野菜も買っていかれたのです。その時に、こういう方々のためにも有機野菜を作り続けないといけないなと強く思ったんです。」

 

実は上村さんにもアレルギーに苦しめられた経験があります。農業を始めた頃はトマトを栽培していましたが、アレルギー反応がでてしまい、別の作物への転向を余儀なくされました。口にするものによっては、自分の命を奪う可能性もある。だからこそ、安心して食べられるものを望む人たちの思いを痛いほどわかっているのです。

 

 

美味しいだけでなく、安心で安全に食べられるものを。自分の口に入るものが、どのようにして作られ、どんな人が携わっているのかを知ると、1粒1粒のいちごをより大切に味わおうという気持ちになっていただけるはずです。

 

GOOD NATURE ACTIVITYでは、今後もこだわりを持った生産者の方々や京都近郊の知られざる観光スポットなどを訪れ、新しい知識や体験を得られるツアーを実施したいと考えています。スケジュールやお申し込み方法は、当Webサイトや館内の掲示板、ホテルフロントなどでご案内しています。次回のアクティビティもぜひお楽しみにお待ちください。

 

▼予約ページのURLはこちら▼

https://goodnature-sta.resv.jp/reserve/calendar.php?x=1582690439

GOOD NATURE STATION編集部
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