発酵食の持つ力とその可能性。「命は命で元気になる」。

発酵食の持つ力とその可能性。「命は命で元気になる」。

発酵食堂カモシカ|関恵さん

 

味噌、醤油、米酢、酒、納豆、漬物、鰹節。これらはすべて日本で受け継がれてきた伝統的な発酵食品です。発酵を経た食品は、保存性が増し、美味しさや栄養価が高まります。中には健康促進の効果が認められるものもあります。また、世界を見渡せば、それぞれの地域に根ざした発酵食品が脈々と受け継がれています。発酵という手法は、人類の食の文化を豊かにしてきたと言えるでしょう。GOOD NATURE STATIONでは、京都・嵐山にある「発酵食堂カモシカ」とともに、1階の「GOOD NATURE MARKET」にて、さまざまな発酵食品を販売する予定です。今回は、発酵食堂カモシカの関恵さんに、発酵食品の魅力とその可能性についてお話をうかがいました。

 

美味しさがもたらす発酵食との出会い

関恵さんが京都・嵐山に発酵食専門のカフェレストラン「発酵食堂カモシカ」をオープンしたのは2014年5月。さまざまな発酵食を味わえる発酵8種定食や季節替わりのカモシカセレクトをメインメニューに、「発酵と出会う入口」をつくっています。

 

 

関:「カモシカは飲食店の顔をした、発酵の世界を紹介するための事業体です。自家製のものや全国から取り寄せたおすすめの発酵食品を店舗とウェブで販売する『発酵マルシェ』を運営しているほか、発酵食手作りキットの開発や販売、また発酵食のワークショップなども行っています」

 

関さん曰く、発酵は微生物と人間の相互関係によって生まれる命のクリエイション。人間が手を添えることで微生物はより元気になり、微生物がはたらくことで美味しく栄養価の高い発酵食が生まれるのです。微生物の命をいただく発酵食の魅力をできるだけポップに伝えたいと、関さんは工夫を重ねています。

 

関:「カモシカの理念は『命は命で元気になる』。発酵食は美味しいし、食べると元気になるということを、頭ではなく体で感じてもらうことが大事だと思っています。たとえば、カモシカでは発酵食を使って、みんなが好きなラーメンや餃子も出します。『美味しかったな』と食後にメニューを見返してくれたら、実はその味に発酵が関係していることに気づいてくれるはずです」

 

子育て中の実感が、発酵食に目覚めるきっかけ

 

関さんの発酵食との出会いは、第一子を出産した愛知・岡崎市の吉村医院。河瀨直美監督のドキュメンタリー映画「玄牝 -げんぴん-」にも描かれた病院です。関さんは、「人生で1、2度しかない出産経験を納得ゆくものにしたい」と病院を探し、吉村医院に出会ったのだそうです。

 

関:「医院の隣には江戸時代の古民家があり、そこに妊婦が集って薪割りをしたりしながら、徹底的に体を鍛えて、みんなで食卓を囲んで昼ごはんを食べて、夕方に帰る。そういう自然な暮らしをして自然なお産をしようということですね。発酵を始めたのも、吉村医院での食事に影響を受けたからなんです」

 

当時、関さんは東京で医療コンサルタントとして働いていました。医療の現場に接して「健康の原点は予防にある」と確信しながらも、予防医療がどのくらい人々の健康に寄与しているのか掴みきれずにいたそうです。一方で、発酵食をベースとした食生活には、確実に健康を保ち、病気を予防するという実感を持つことができました。

 

関:「第一子を産み育てる中で、健康は台所からつくられるのだと実感しました。お腹を下した時は梅干し、お腹がゆるい時は葛、体の不調のほとんどが台所でなんとかなるのです。それからは、いろいろな発酵食をつくり始め、家中が瓶だらけになっていきました(笑)」

 

しかし、その頃の関さんにとって、発酵はあくまで趣味。事業として取り組むことを決意したきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災でした。

 

 

関:「3月12日の夜にとりあえず家族で西に避難しました。第二子はまだ生後数ヶ月のうぶうぶの赤ちゃんで、夫は被災地・宮城の出身。福島の原発の事故の後、政府が『ただちに人体に影響はありません』と発表するのを聞きながら、『残りの人生は自分が本質だと思うことをやろう』という覚悟が生まれました」

 

それまでの経験にとらわれず、自分が本当にやりたいことは何か。関さんが「一生かけてもいいと思える本質的な価値があるもの」として選んだ道が発酵だったのです。

 

まずは自分でつくるところから

GOOD NATURE STATIONで取り扱う予定商品の一つに、関さんが開発した「発酵食品手づくりキット」があります。ぬか床キット、手前味噌キット、梅干しキット、柚子胡椒キットなどなど、計量済みの材料と必要な道具、レシピがセットに。発酵食に興味は持っているけれど、「何から始めたらいいかわからない」「面倒臭そう」と二の足を踏んでいる人のための商品です。

 

 

 

関:「今の世の中は情報が多すぎて、人は行動する前に考えてばかり。ハードルを下げて『とりあえずつくる』ことを始めてもらうために開発しました。つくれば自信を持てるし、人に伝えたくなります。自分でつくった何かは“自分の分身”になって、新たな関係性を生み出すんですよね」

 

カモシカの使命は「台所に命ある食を取り戻す」こと。発酵を通して暮らしを変えていくことを提案し続けています。GOOD NATURE STATIONでは、「発酵食品手づくりキット」のほか、カモシカが選び抜いた全国の発酵食も販売する予定。まずはその美味しさを通して、発酵の世界の扉を開いてみませんか。

 

 

GOOD NATURE JOURNAL編集部
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