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オーガニックタオルが生まれる「IKEUCHI ORGANIC」の 今治ファクトリーを訪ねて

オーガニックタオルが生まれる「IKEUCHI ORGANIC」の 今治ファクトリーを訪ねて

GOOD NATURE HOTEL KYOTOの客室には、愛媛県今治市を拠点にオーガニックタオルを生産している「IKEUCHI ORGANIC」のタオルを備えています。最大限の安全と最小限の環境負荷でものづくりをすることを大切にしている「IKEUCHI ORGANIC」は、こだわり抜いて選んだオーガニックコットンを用いるだけでなく、タオル完成までの工程にもさまざまな工夫が凝らされています。そんなタオルが生まれる今治へ、「IKEUCHI ORGANIC」代表取締役の池内計司さんを訪ねました。

 

時代とともにアップデートを重ねる

 

 

池内計司さんが代表取締役を務める「IEKUCHI ORGANIC」は、1953年に池内タオル工場としてスタート。創業当時は欧米への輸出専用メーカーで、その後、国内向けにはブランドタオルのOEMを手掛けていました。池内さんが2代目の社長に就任した後の1991年、オーガニックの綿糸が日本に入ってきたことを機にオーガニックタオルづくりに挑戦。しかし、池内さん曰く「オーガニックについて何もわかっていなかった」と一度製造を中断したそう。そして、しまなみ海道が完成した1999年、国内外から今治のタオルに目が向けられるはずと、ファクトリーブランドを立ち上げ再び開発を始めたのでした。

 

 

池内:「当時はオーガニック=生成りのイメージで、環境のためには品質も我慢という時代でしたが、1996年に世界で最初のオーガニック商品を開発したノボテックス社(デンマーク)のノルガード社長と出会い、目から鱗が落ちたのです。安全で環境負荷の少ない染色方法であるローインパクトダイの考え方とノウハウを伝授されました。もともと今治だけで限定的に販売しようと思っていたので、販売よりもメーカーとして納得のいく理想的なタオルを優先して開発したのが現在でも中心商品のオーガニック120です。思いの外いい商品ができあがりましたが、色のついたオーガニックはオーガニックではないと見向きもされませんでした。そこで、海外へ目を向け、2000年1月にアメリカのロサンゼルスでの展示会に出展。ロデオドライブのセレクトショップなどがすぐに反応していただき、2002年3月にはよりオーガニック指向が高いニューヨークに出展。いきなりNew Best Awardというグランプリを獲得し日本でも評価されるようになりました。」

 

国内ではエコプロダクトショーに出展することにより熱烈なエコマニアから厳しい注文を受けることもありましたが、改善を重ねるなかでひとりふたりと支持者が増えていき、たくさんの意見が寄せられるようになりました。

 

池内:「最初から自分に現在のアイデアがあったわけではなく、お客さんがどんどん提言をしてくれて発見がありました。『オーガニックと謳っているのに製造過程の電力が汚い』と言われて、初めてその矛盾にも気づきました。グリーン電力証書による買電システムの存在を知り、2002年1月から風力発電に切り替えたことで、 “風で織るタオル”と呼ばれるようになったんです。おかげさまで生産工場として100%グリーン電力の日本最初の向上となりました。当時さまざまな指摘をしてくれた方々が、今ではうちの一番のファンになってくれています」

 

2014年、社名を「IKEUCHI ORGANIC」と変更し、ブランド名も一本化させ、オーガニックに特化したファブリックを手がける企業として新たなスタートを切りました。

 

 

 

池内:「オーガニックを入れるならと、タオルにつけているタグもすべてオーガニックコットンと糸を使ったものに変更しました。加えて、そんな地道な準備を糧に、世界トップレベルの安全な繊維製品の証である『エコテックスクラス・スタンダード100・クラス1』を全製品で取得しました。これは生後36ケ月までの乳幼児が口にしても安全という認証です。創業からの60年で、乳幼児が舐めても大丈夫な商品がつくれたので、次の60年では“2073年までに赤ちゃんが食べられるタオル”を目指して研究を続けています。全製品取得のタオル会社はIKEUCHI ORGANICだけと評価されています」

 

職人の技と環境への配慮

「IKEUCHI ORGANIC」が掲げる“最大限の安全と最小限の環境負荷”でのものづくりの舞台は、なんと言っても本社に併設された織工場と、同じ愛媛県内にある染工場です。スイスのリーメイ社のbioReプロジェクトによって管理されているオーガニックコットンは、単糸を2本の糸(双糸)に撚り合わせる加工や染晒などの糸加工を経て織工場に到着。ここからタオルを織り上げるための下準備が始まります。

 

 

 

 

 

織工場ではまず、糸は500本設置可能なクリールという機械にセットされ、織機で使うビームという巨大な糸巻き(3,000本から5,000本)に巻き取られます。オーガニックコットンは遺伝子組み換えの通常綿とは異なり品質が安定しないため、ロットの違う糸は混在させないことに注意しながら作業は進められていきます。ビームを巻くのに1日かかると言われるほど丁寧さが求められる工程です。

 

 

 

そして工程は製織へ。ビームを織機にセットし、職人さんが織機にかかった糸と手作業でつなぎ合わせるとスタートします。

 

 

ここで織れるオーガニックタオルは、1台につきバスタオルなら1日で100枚、フェイスタオルなら300枚が目安で、一般的なタオルよりもとても少ないのだそう。織りはオートメーションでも、肌触りや風合いを追求すると、製織製を優先した綿糸加工は避けざるを得ず、糸はとても柔らかく、パイル(お客さまが触るループの糸)も長めの設定となるため、製織製が悪く糸切れが多発するので、時間がかかります。また、天候や湿度にも左右されるといい、職人さん泣かせなのです。

 

環境負荷をゼロに近づける浄水施設

こうして丁寧に織られたタオルは、今治市のお隣、車で45分ほどの西条市にある染工場へ運ばれ、生地を染める加工が施されます。「染料には堅牢度の高い(色落ちが少ない)反応染料を選んで使用しています。100kgの生地に対して1.2tというたっぷりの量の水を使い、ゆっくりと染めていくのが大切なんです」と池内さんは話します。

おの染色工場で使用する地下水は名水の誉れ高い石鎚山系のバージンウォーターです。

 

 

 

染めた生地は洗いの工程へ。反応染料は現時点では人類が発明した最も安全な染料のひとつと言われていますが、大量の排水を出すという環境汚染の問題を抱えています。加えて、瀬戸内海は新規の工場排水に対して世界一とも言える厳しい基準が設けられています。そうした地域に無謀にも提携している会社と共同で新設したので「世界最高水準の排水浄化施設だと思います」と、池内さん胸を張るのがこちらです。

 

 

染料と綿カスを含んだ排水を貯水し、その中に棲むたくさんのバクテリアに染料を餌として食べさせることで、水質はほぼ透明なCOD15PPM以下になります。その上で海に戻すことで、環境への負荷を限りなくゼロに近づけているのです。貯水槽内には大量のバクテリアが生息しており、常に酸素を送り棲息環境を整える必要があります。工場が長期休暇に入る際は、バクテリアたちに餌を与えるほど重要な存在。この浄水システムがIKEUCHI ORGANICの誇る「最小限の環境負荷」を可能にしているのです。

 

最後は人の手と目で完成

そして生地はスペイン製の連続乾燥機へ。乾燥機の中ではタオルに熱風を当てて生地を前後に飛ばし、約240回風合いだしローターに叩きつけながら乾かしていきます。120回ほど行うそうですが、この数が少ないと風合いが損なわれたり、乾かなかったり…。この作業をしっかりやることで、パイルがソフトにふっくらと立ち、自宅で適切な洗濯をしていただけばパイルがきっちり元通りの仕上がりになる効果もあるのです。

 

染工場の最終工程では、機械で生地を1列ずつ裁断し、「耳」と呼ばれるタオルの天地の部分をミシンで縫った後、1枚1枚手作業でカット。そして、「ヘム」というタオルの両端を縫い終えると「IKEUCHI ORGANIC」のタオルが完成します。ここでの精密な縫製こそがタオルの上質さの証明だと言い切っています。

 

 

 

 

完成したタオルは再び織工場の一室に運ばれ、最後に人の目によって厳しい検品が行われます。織り傷がないか、パイル抜けがないか、汚れがついていないか、変形していないか…丁寧さを通り超えた神経質ともいえる1枚毎の目視検品をして、検品基準をクリアしたタオルだけが工場から出荷されていくのです。

 

 

 

 

“食べられるタオル”へ近づくために

デザインはシンプルを貫いたまま変えることなく、しかし時代に合わせて最大限の安全と最小限の環境負荷をアップデートし続けてきた「IKEUCHI ORGANIC」のタオルは、今も新たな変化に向けて研究が続けられています。今日現在では商品のトレーサビリティ(綿花の栽培地から商品になるまで)が商品ごとに添付されるという食品のような品質管理を実現しています。いとも簡単に言い切っていますが、ここまでできるタオルは現時点では他に存在していません。

 

池内:「今は『最大限の安全』をまた一つ実現するべく、オーガニック天然染料で染めたタオルを商品にできたらと夢見ています。タオルは毎日洗っても耐えられる堅牢度の解決にはまだまだ多くの解決すべき問題が残っています。ひとつひとつの解決が目標としている“食べられるタオル”にまた一歩近づきます。それが一番の目標ですね」

 

肌に優しく、触り心地も抜群なオーガニックタオル。丁寧につくられたこのタオルの使い心地をぜひGOOD NATURE HOTEL KYOTOでご体感いただければと思います。

 

 

IKEUCHI ORGANIC カブシキカイシャ

愛媛県今治市延喜甲762

0898-31-2255

9:00〜17:30(平日のみ営業)

https://www.ikeuchi.org/

 

GOOD NATURE JOURNAL編集部