中華料理とガストロノミーを融合した、 「VELROSIER」が目指す「成長」

中華料理とガストロノミーを融合した、 「VELROSIER」が目指す「成長」

GOOD NATURE STATIONの2階には、新しい食体験を楽しんでいただくためのプレミアム・ガストロノミーフロアがオープンします。そのうちの1軒、「VELROSIER」は中華料理をバックグラウンドにしながらも、フレンチのような美しい盛り付けや最新の調理器具を取り入れた料理法によってチャイニーズガストロノミーという新しい領域を開拓し続けています。常に成長を求め、クリエイションすることを止めない35歳の若きオーナーシェフ・岩崎祐司さんに、その原動力となる料理に対する熱い想いをうかがいました。

 

「足し算」が生む独創的な料理

 

例えば、お店で大人気の一品、フォアグラを使ったもなかは、こんな風に店名入りの缶の箱に入って出されます。まるで高級なお菓子のようですが、箱を開けるとほんのり漂うクローブの香りが中華料理らしさを感じさせます。こうした演出に象徴されるように、VELROSIERの料理には驚きが満ちています。

 

 

また、こちらはデザートではなく、なんと鮎を使った前菜料理。シュー生地の中には中華風に味付けした鮎のペーストが入っており、見た目からは想像もつきませんが、口に入れると確かに中華料理だと感じられるのが面白いところです。

 

岩崎:「僕の料理は基本的に足し算なんです。メニューを考える時は、季節に合わせてメインの食材をひとつ決めて、そこからチェーンのようにどんどん繋げていく。この食材にはあれが合う、あれを使うならこれが合う…そんな風にして最後に選んだ食材と最初に選んだ食材が繋がって円になって戻ってくる。そんなイメージです。そうするとお客さんにとって『初めて食べる味』になる。ただ、やはりメインは中華料理なので、そのエッセンスをどこかしらに残しておいて、わかってもらえたらいいなと思っています」

 

岩崎シェフがガストロノミーの世界を志したのは25歳の頃。ホテルで修業をしながら自分の進むべき道を模索する中、ミシュランで三ツ星に輝いたフレンチレストランで食事をしたことがきっかけでした。繊細な火入れ、目を楽しませる盛り付け、温度差の活かし方など、料理ごとに変わる多彩な趣向に感動。さまざまなレストランを食べ歩き、専門書を読み込んで独学で研究を重ねました。

 

とにかく新しいものをつくりたい

 

そうした研鑽を経て生まれた岩崎シェフの得意技の一つに、中華料理の「分解再構築」があります。料理に使われているものを素材単位に「分解」し、調理や味付けの中に新しい解釈を加えて「再構築」するというものです。

 

例えば餃子なら、ニラの茶碗蒸しを敷き、上に炒めた豚ミンチとキャベツをのせ、その上に蒸してから焼いた餃子の皮をかぶせます。そして、焼いたキャベツのスープをゼリー状にしたものをかけて、最後にニラのアイスパウダーを振りかけるといった具合。「素材の温度差や食感の違いを楽しんでもらいつつ、食べると上品な餃子になっているんです」と岩崎シェフが話すように、餃子に使われている素材を、まったく違う調理法によってアレンジし直したもの。その自由な発想に、フレンチやイタリアンのトップシェフたちからも賞賛の声が上がったと言います。

 

こうした岩崎シェフのクリエイションを支えるのは、料理人として成長したいという飽くなき探求心です。

 

岩崎:「高校を卒業して18歳からずっと中華料理をやっていて、とにかく新しいものをつくりたい、クリエイションしたいという想いは常にあります。だから、今の店を始める時も、『今までやった中華料理はやらないでおこう』と決めていました。実は自分で考えたり、いただいたりしたレシピが山のようにあるんですが、今の店ではほとんど使っていません。全部イチから考えようと思って。そうでないとクリエイションできませんから」

 

 

その想いは、お店のスタイルや料理の内容にも現れていると岩崎シェフは話します。

 

岩崎:「今の厨房には火力の強い中華レンジも中華鍋も蒸し器もなく、いわゆる中華料理店の設備はありません。どちらかと言うとフレンチの厨房に近いですね。開店直後はあったんですが、それがあると何でもつくれてしまうので、これ以上は上手くならないと思ったんです。だからそれは止めて、火の入れ方も食材の使い方も、今までとはまったく違うことをやろうと決めた。料理のボリュームや品数が多いのも、本音を言うとお客さんのためではなく、自分のための鍛錬なんですよ。やっぱり数をこなさないと上手くならない。職人ですから」

 

京都はステップアップのためのステージ

 

中華料理とガストロノミーを融合させるという新しい領域を開拓した岩崎シェフ。5年間、腕を振るった西宮・苦楽園からGOOD NATURE STATIONのある京都へと舞台を移します。

 

岩崎:「店を始める時、5年間このやり方で続けて、ダメなら普通の中華料理に戻そうと思っていたのですが、何とか形にはなったかな。でも、まだまだ発展途上なので、これからの5年、10年のためのステップアップのためのステージだと思っています。京都なら外国人観光客も多いでしょうし、その方たちがどんな反応をするのかを見ながら考えていきたい。何を言われるかわかりませんから、怖い部分もありますよ。でも、それを乗り越えないと。何か言われても、それを受けてまた新しいものをつくる。そんな時代だと思いますね」

 

京都へやって来る岩崎シェフのレストランや料理がどのようにパワーアップするのか、ぜひお楽しみにお待ちください。

GOOD NATURE JOURNAL編集部
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